コロナ禍を契機に、日本の製造業におけるサプライチェーンのあり方にも大きな変化が生じています。なかでも、サプライチェーンが特定の国に依存しすぎるリスクが顕在化し、産業がそういったサプライチェーンの影響を受けやすくなったと言われています(経済産業省通商白書、2024年). 。今、日本の製造業においても、従来よりも強固で効率的なサプライチェーンの構築が求められるようになっています。
現在、日本企業の約6割が海外から主要原材料や部品を調達しています。そのうち約7割の企業が、調達先の分散や標準化を進めています。さらに、一部の企業では国内回帰や第三国への移転といった新たな対応策を講じ、サプライチェーンの安定化に努めています。この動きは今後ますます加速する可能性があります (JETRO, 2024)。この動きは今後ますます加速する可能性があります。
サプライチェーンのあり方が変わる中で、不可欠なのがデジタルツールの活用による、サプライチェーン全体の可視化や効率化です。今日は、製造業がサプライチェーン管理を行う中で、Odooがどのようにサポートできるかという観点から、考察してみたいと思います。
サプライチェーン管理とは?
サプライチェーン管理(SCM)とは、原材料や部品の調達、移動、保管から、仕掛品や完成品の配送に至るまでのプロセスを管理を指します。製造業は、多くのサプライヤーと協力しながら、コスト削減と納期遵守の両立を図る必要があります。
OdooのようなERP(統合基幹業務システム)を導入することで、こういったサプライチェーン管理が可能になります。

Odoo ERPでサプライチェーン管理を改善する7つのポイント
Odoo ERPを活用することで、サプライチェーンに以下のような改善が期待できます。
1. グローバルな可視化
Odooによって、サプライチェーン全体が「一元管理」できるようになります。
Odooの強みは、リアルタイムでサプライチェーンのデータを一元管理できる点です。データを可視化し、即時にOdooのアプリに反映することにより、問題が起こった際にもすぐにそれを把握し、迅速に解決することができるようになります。さらに、顧客への納期回答の精度も向上します。
2. サプライチェーンを「エンドツーエンド」で統合できる
Odooは、在庫管理、製造管理、購買管理、販売管理を統合して運用できるため、サプライチェーン全体の効率化が実現します。これにより、部門間の連携がスムーズになり、業務の最適化が進みます。生産計画と購買計画を統合し、無駄な在庫や過剰発注を防ぐことも可能です。
Odooは、一律料金で80以上のアプリが使い放題で、それぞれのアプリは連携し、データは自動で同期します。アプリの中にはサプライチェーンに関するアプリも複数存在します。例えば、在庫アプリ、製造アプリ、購買アプリ、販売アプリを使うことで、サプライチェーン全体をOdooだけで管理することができます。
社内や社外でのログノートの機能もあるため、部門間の連携がスムーズになります。
3. 在庫管理の最適化
サプライチェーン管理に必須のOdooのアプリの一つが、在庫アプリです。これを活用することで、在庫状況の可視化、倉庫データの整理、製品移動の追跡が可能になります。
Odooの在庫アプリによって、消費された原材料の記録や、作業に割り当てられた在庫の管理、不足しているアイテムの特定が自動化され、購買部門の業務効率が向上します。
4. ベンダー管理の向上
サプライチェーン管理にとって、ベンダーをどのように選択し、管理するかは死活問題といって良いでしょう。Odooを活用することで、過去の取引履歴、リードタイム、納品実績をもとにベンダーを評価し、最適なサプライヤーを選択しやすくなります。
また、ベンダーに対する発注書管理を一元化することによって、調達コストに対する交渉力を高めることが可能です。
5. 購買プロセスの効率化
製造業では、原材料や部品の調達は非常に複雑です。特に長納期の部品の場合、設計や製造工程が確定する前に発注する必要があり、調達のタイミングが重要です。
Odooがあれば、製造・倉庫・物流管理を統合して行うことが可能になり、ベンダーとのコミュニケーションが自動化できます。例えば、エンジニアリング部門と購買部門をシームレスに連携させることで、必要な部品を適切なタイミングで調達できるようになります。
6. リアルタイムのレポーティング
手作業でのレポート作成は、データ収集や作成の負担が大きく、情報の遅延が起きたり、情報や数字がミスによって不正確となるリスクがあります。Odooのビジネスインテリジェンス機能を活用すれば、リアルタイムでサプライチェーンのパフォーマンスを分析することができます。例えば、在庫の移動や業務効率を最適化するためのデータを提供することが可能です。
7. 資材所要量計画(MRP)の強化
Odoo ERPは、このMRPの機能も持ち合わせており、さらに企業全体をERPとして管理することが可能です。これにより、取引データの一元化や資材計画の自動化、サプライチェーン全体の最適化が可能になり、製造業の競争力を向上させます。

Odooのどのアプリがサプライチェーン管理に役立つ?
では、サプライチェーン管理にはOdooのどのアプリを使えばよいでしょうか。「サプライチェーン」モジュールの中には、サプライチェーン管理に必要な次のようなアプリが含まれています。
- 在庫: Odooのスマートな複式在庫システムにより、販売、購買、会計の運用をリアルタイムで最適化します。正確な在庫情報を把握し、効率的な在庫管理が可能となります。
- 製造: トレーサビリティ、作業指示管理、生産計画を強化し、効率的な生産を実現します。Odooは、生産現場の状況をリアルタイムで管理し、迅速な対応が可能になります。
- 購買: 購買プロセスにおける仕様変更や承認フローを効率的に管理し、リアルタイムでチーム全体に共有できます。これにより、調達業務の効率が向上し、遅延を減少させることができます。
- 整備: Odooは、MTBF(平均故障間隔)やMTBR(平均修理時間)などの統計情報を自動生成し、修理の追跡やスケジュール管理を最適化します。これにより、設備のパフォーマンスを最大化できます。
- 品質: 品質管理のポイントを設定し、製造アプリから直接品質アラートを発信することで、製品の品質を維持し、問題が発生した際には即座に対応できます。
- PLM:(製品ライフサイクル管理) OdooのPLM機能により、工程のバージョン管理が効率化され、すべての更新がリアルタイムでチーム全体に反映されます。これにより、製品の変更管理が迅速かつ正確に行えます。
今回の記事では、主に製造業にフォーカスして、OdooのERPがどのようにサプライチェーン管理に役立つかという観点から考察しました。 Odoo ERPを活用し、サプライチェーン管理の効率を最大限に高めましょう。
2025年5月30日に東京にてOdooのDXセミナーを開催します! ぜひご参加ください。See more